感極まって漏れる喘ぎ声は途切れとぎれではあっても心地よい高さで男の本能を刺激する。けっして耳障りな音ではない。
かろやかな音色を響かせる楽器よりも女の吐息や喘ぎ声は心地よいサウンドとして部屋に充満する。
いつどんな時でも不協和音を奏でることはない。男の愛撫に全身で応え、声帯を震わせて感じるままの音階を刻む。ほと
んどは単音なのだが、時にビブラートがかって長く伸びる音になる。二分音符、四分音符、全音符、スタカート、アレグロ、
ピアニシモ、すべての音楽記号と要素がそこに詰まっている。男のタクトを女が握る。軟らかな掌(てのひら)がタクトを包む。